私がバンクーバーに来てから3年が経過した2021年12月、カナダ永住権を取得しました!
渡航当初から多少なりとも永住権への関心がありましたが、コロナで勤務先を突然解雇されたり、就労ビザの期限切れが迫ったりと紆余曲折ありましたので、実際に取得でき感無量です。
申請システムそのものの概要や申請方法については、先人の方々のブログやエージェントのウェブサイトですでに解説されています。ですのでこの記事では、私個人の永住権申請プロセスを時系列で振り返りつつ、準備しておいて(&しておけば)よかったことや、参照した情報源を中心に紹介します。
特に、私と同じような経歴(アラサー、日本&カナダでの就労経験あり、英語力そこそこ)の方の参考になるかと思います。
書き進めるうちに長くなってしまったたため、
- 事前調査編(経歴、申請カテゴリー選択、スコア計算、プロフィール登録)
- 本申請編(必要書類準備、詳細情報記入)
- 取得編(追加手続き、PRカード受領、費用)
という3つの記事に分割することにしました。
なお、申請にあたってはエージェントを使わず、ネットや知人から情報を集め自分で行いました。私はビザコンサルなどの専門家ではないため、制度の変更や私の勘違いによる記載内容の間違いがある可能性がありますので、あらかじめご了承願います。
私の経歴
申請時点の私の経歴についてかんたんにまとめました。
- 30歳
- 私大理系卒(工学部・建築学科)
- 未婚、扶養家族無し
- 英語力:
- TOEIC 945点(2017年)
- IELTS Academic 6.5(2017年)
- IELTS General 7.0(2020年)
英語学習が好きで学生時代から勉強していましたが、有名大学卒→大手企業勤務のようなハイスペックな人材ではありません。私のような普通の人でも十分に永住権取得の可能性があることを知りました。
カナダ移住前後のタイムラインはこちら。
- 2015年4月 大学卒業後、建設コンサルタントで3年半勤務
- 2018年10月 カナダ・バンクーバーでブリティッシュ・コロンビア工科大学(BCIT)に1年間留学、Certificate取得
- 2019年10月 バンクーバーのデザイン会社でJunior Web Developerとして就職
- 2020年3月 コロナ&経営不振のため一斉解雇され失業
- 2020年9月 現職の会社で再就職
申請カテゴリーの選択
永住権申請には複数のプログラムがありますが、私は日本人が最も多く利用するプログラムのひとつである、Canadian Experience Class(CEC)というプログラムの、Express Entryシステムを使いました。
他にもFederal Skilled Workerや、BC州のBC PNPなどさまざまなプログラムがありますが、私自身が使ったことがなく、知識が浅いためここでは言及しません。
Canadian Experience ClassのExpress Entry以外で申請した同僚や知人(Federal Skilled WorkerやFamily Class)は、取得までに1年近くか、それ以上かかっているようです。
また、エージェントを使わず申請と言いましたが、複数あるカテゴリーのうち、自分の経歴ではどのプログラムが1番早く永住権を取得できるかについて確実な情報を得たかったため、カナダ政府公認移民コンサルタントのSHIBAさん@shiba_san001 のコンサルテーションサービスを利用しました。質問に対しとても丁寧にご回答いただき、ありがとうございました。
「カナダ永住権」
— カナダ政府公認移民コンサルタント・SHIBA(介護士としても時々勤務。ライフワークとして継続します) (@shiba_san001) January 10, 2022
エクスプレスエントリーは移民プログラムと思われる事がありますが点数制システムの事です。例えば下記の移民プログラムと連動しています。
・カナディアンエクスペリエンスクラス
・フェデラルスキルドワーカー
・フェデラルスキルトレード
・プロビンシャルノミニー
ややこしい😅
自分のスコアを計算
まず最初のステップとして、Comprehensive Ranking System(CRS)で、自分がスコアを何点取得できるかを計算しました。
- Core/Human(人的資本)
- Spouse(配偶者・パートナー)
- Skill Transferability (能力の移転可能性)
- Additional Points (その他追加点)
うまく対応する日本語が思いつかなかったのですが、これら4つの分野の質問で、自分に当てはまるものを選び得点数を合計していきます。
Core/Human capital factors:356点
- Age 年齢 = 105
- Level of education 学歴 = 128
- Official Languages 言語 = 83
- First Official Language = 83
- Second Official Language = 0
- Canadian work experience カナダ就労経験 = 40
- Subtotal – Core/Human capital factors = 356
年齢:105点
申請時の年齢は30歳だったので105点でした。20〜29歳なら最高点の110点がもらえます。30歳以降は年齢が上がるごとに点数が減り、40歳だと50点(配偶者無しの場合)、45歳以上だと0になってしまいます。
学歴:128点
私は日本の4年制大学を卒業しました。
また、カナダ渡航1年目の留学では、BC州の大学、British Columbia Institute of Technology(BCIT)のNew Media Design and Web Developmentコース(1年間)を修了し、Certificateを取得しました。
学士号のみの場合は120点ですが、BCIT留学を足すことができたので、Two or more certificates, diplomas, or degrees. One must be for a program of three or more years(128点)が適用されました。
英語力:83点
語学力のテストは、IELTSがCELPIPのどちらかを選べます。知り合いはCELPIPを受ける人が多かったのですが(IELTSと比べ易しいとのこと)、私は4年前の留学の際に受験経験があったIELTSを選択しました。
ただ、当時受験したIELTSはAcademicモジュールでしたが、永住権申請にはGeneralモジュールのスコアが必要です。
2021年2月上旬に受験したところ、スコアは7.0でした。リーディングが8.5と高かった一方、苦手なアウトプットであるライティング(5.5)とスピーキング(6.0)が足を引っ張ってしまいました。
IELTSまたはCELPIPで取得したスコアは、CLBレベルという基準に換算します。
こちらのページで詳しい説明があります。プログラムごとに表が異なりますので、後半の「Canadian Experience Class」の箇所を確認してください。
フランス語力:0点
フランス語は全くわかりません。
職歴:40点
カナダ政府が分類している職業一覧、NOC(National Occupational Classification)を確認し、NOCレベルB以上の職種で、カナダの企業での1年以上の就労経験が必要です。
NOCについては、@KzFlyinBCさんがご自身のブログでとてもわかりやすく解説されています。
私は申請時点で勤務していた会社でGraphic Designerの肩書きで勤務していたことから、5241 – Graphic designers and illustratorsとして申請することにしました。
他にも、
- 2173 – Software engineers and designers
- 2175 – Web designers and developers
という職業定義もありますね。
カナダの会社での就労期間が1年以上、また日本の会社での就労経験から、計40点が加算されました。
追記(2022年1月28日):2022年後半から、新しくTEERという職業分類が使われるそうです。一部の職種ではNOCと比べ格下げになったものがあるようですので要チェックですね。
「カナダでの就労経験」についての注意点
私の場合、州立大学のBCITを卒業後、Post Graduation Work Permit(ポスグラビザ)を取得しカナダの企業で働きました。この期間は「カナダでの就労経験」に算入することができます。
しかし、私立のカレッジに留学するパターンでよくある「1年間の座学+1年間のCO-OP」の場合、CO-OP期間中の就労はカナダでの就労経験に算入できません。
CO-OPが終わる前にワーホリやLMIAなど他の手段でビザを確保して引き続き働けば、CO-OP後のその期間から就労経験として算入することができます。
4年前、学費やカリキュラムを比較し、州立のBCITと私立カレッジのどちらにするか悩みましたが、前者を選択したことが永住権取得にかかる時間の短縮につながりました。
なお、最近一部の私立校でもポスグラビザがもらえるコースがあると耳にしました。留学時から永住権取得を見据えている場合は、事前によく調べることをおすすめします。
ポスグラビザについてはカナダ政府のウェブサイトに詳しい説明があります。
Spouse:0点
配偶者やパートナーはいないので0点でした。欲しいですね…
Skill transferability factors:50点
- Education (to a maximum of 50 points)
A) Official Language proficiency and education = 0(もしIELTSで全技能が6.0以上だったら25点)
B) Canadian work experience and education = 25
Subtotal = 25 - Foreign work experience (to a maximum of 50 points)
A) Official Language proficiency and foreign work experience = 0(もしIELTSで全技能が6.0以上だったら13点)
B) Canadian and foreign work experience = 25
Subtotal = 25 - Certificate of qualification = 0
- Subtotal Skill transferability factors = 50
ここでの失敗がIELTSのスコア。私はオーバーオールで7.0(L:7.5 / R:8.5 / W:5.5 / S:6.0)と悪くないスコアを取得したものの、ライティングがまさかの5.5でした…
もしライティングを含めた全技能が6.0以上であれば、オーバーオール自体が今より低い6.0だったとしても、計38点が加算されることがわかりました。加えて、前述のCore/HumanのFirst Official Languageも8点の差が出ました。
ですので、もし私のように得点に偏りがある場合、苦手科目を優先して勉強することをおすすめします。
なぜここまで差が出るのか詳しく見てみました。
— とおまわり🇨🇦 (@toma_wari) February 21, 2021
IELTSの各技能が6.0に達するかどうかで、Skill transferabilityが38点も変わってくるとは!
なので、今回の自分のWが5.5だったIELTS 7.0(459点)よりも、全技能で6.0を取ったほうが(482点)ずっと多いポイントをもらえるのね… https://t.co/gITymefY75 pic.twitter.com/toDlij5YVE
追加点:65点
- Provincial nomination = 0
- Job offer = 50
- Study in Canada = 15
- Sibling in Canada = 0
- French-language skills = 0
- Subtotal Additional points = 65
他にも特定の条件にあてはまれば追加点がもらえます。私の場合、現在勤務している企業からのジョブオファーを持っている(50点)、BCIT留学経験(15点)が加算されました。
ジョブオファーとは
ここでいうジョブオファーとは、単に「雇用主が申請者を継続的に雇用したいという内容の書類」だけでははなく、LMIA(Labour Market Impact Assessment)の承認を得ている必要があります。
私はもともとBCIT卒業後にもらったポスグラビザの期限が切れそうになった際、現在勤務している会社に依頼してLMIAを申請し承認を得ました。
その直後、コロナによるカナダ政府の特別救済策のおかげでポスグラビザが1年半延長でき、結果的にLMIAは不要になりましたが、LMIAの承認を得たことで50点の追加点がもらえました。
LMIAについてはそれだけで1つ記事が書けるほどの内容ですのでここでは割愛し、参考にした記事を紹介します。
【2022年度】LMIAとは? カナダ就労ビザ取得の最大の関門です | カナダ留学コンパス
合計:471点
各項目の点数を合計すると、471点になりました。
- Core/Human:356
- Spouse:0
- Skill Transferability:50
- Additional Points:65
あらためて振り返ると、
- 年齢が30歳:105点(満点−5点)
- 日本での職歴3年以上あり:25点
- ジョブオファーあり:50点
の3つの要素による加点が大きかったですね。しかしどうせなら500点以上欲しかったなぁ…
プロフィール登録
自分のスコアがわかったところで、「永住権を申請したい!」という意思表示をするためのプロフィールを登録しました。
IRCCの自分のアカウントにログインし、新規申し込みの項目からExpress Entryを選択します。
まず、職歴・語学力・年齢など基本的な事柄を聞かれたのち、プロフィール作成の資格があると判断されれば、より詳しい内容を入力する画面に遷移します。
前述のスコア計算システムで質問された内容とほぼ同じ、下記の質問に対して回答を入力します。選択内容によって質問数は増減しますが、計100件近い項目がありました。
- Personal details 個人情報
- Names 氏名
- Personal description 生年月日、生まれた国
- Marital status 婚姻状況
- ID documents – summary パスポート
- Immigration history and citizenships 国籍
- Family 家族
- Relatives in Canada 親戚のカナダ永住権・国籍保持者
- Contact details 連絡先
- Language of correspondence 連絡の際の言語
- Email Address メールアドレス
- Study and languages 学歴・語学力
- Education history 学歴
- Official languages カナダ公用語の理解度(IELTSなどのスコアを記入)
- Application Details 詳細
- Provinces and territories of interest 居住する予定の州・都市
- Nomination and selection 州からのノミネーションの有無
- Representative 利用しているコンサルタント
- Work History 職歴
- Occupation 職業分類NOC
- Canadian certificate of qualification 州発行のCertificate
- Intended work in Canada ジョブオファー
- Work History 国内外での就労経験
- Research カナダでの仕事探しに関するアンケート
なお、この段階では、回答内容を証明する各種書類の提出はありません。書類はインビテーションが届いたあとの本申請で提出します。※IELTSの試験結果に記載されている番号は必要です。
すべての質問に回答してプロフィール登録が完了したら、インビテーションが届くのを首を長くして待ちます。
年に複数回行われるインビテーション発行時の最低得点数よりも自分のスコアが上回っていれば、ITA(Invitation to Apply、インビテーション)が届き、本申請に進むことができます。
最新のインビテーション発行日・対象プログラム・最低得点数についてはカナダ政府のウェブサイトで確認できます。
私の場合、2021年5月31日にインビテーションが届きました! この日の最低スコアは380点。これ以上のスコアを持っている人がインビテーションをもらえます。 ※当時のツイートでは自分の得点は421点と思っていましたが、勘違いでした。
🇨🇦カナダ永住権取得、久しぶりの進捗。今日Invitation to Apply(ITA)が届きました!
— とおまわり🇨🇦 (@toma_wari) June 1, 2021
結局LMIAは使わず、IELTS再受験もしなかったため、自分のスコアは421点しかありませんでしたが、今日の最低スコア380点は余裕でクリア。コロナ前だったら足切り… pic.twitter.com/hHu9ETrdeq